健康調査専門委員会
活動目的
新設炉建設計画の一環として、現在のごみ処理施設周辺住民のダイオキシン類問題に関して、周辺住民の健康への影響を調査するため、「久喜宮代衛生組合健康調査(血液中ダイオキシン類)専門委員会」を設置しました。
構成
医師、研究者、法律家、行政担当者等により構成されています。
【委員長】 | 永井正規 | (埼玉医科大学 教授) |
【副委員長】 | 石﨑憲治 | (埼玉県埼葛北保健総合センター所長) |
鈴木規之 | (国立環境研究所 総合研究官) | |
保科弘志 | (埼玉県環境防災部化学保安課副課長) | |
杉崎三男 | (埼玉県環境科学国際センター 主任研究員) | |
土屋與之 | (久喜市医師会 会長) | |
福岡 務 | (宮代町医師会 会長) | |
岡部 繁 | (久喜宮代衛生組合産業医) | |
石田晴久 | (弁護士) |
順不同・敬称略 平成15年5月15日現在
経過
【第1回専門委員会】
平成14年5月16日(木)午後1:00~
委員長の選出
経過説明
事務局から健康調査を行うこととなった経過の説明
実施計画(案)について
事務局から実施計画(案)について説明し、具体的な検討については第2回専門委員会で行うこととなりました。
【第2回専門委員会】
平成14年6月27日(木)午後1:00~
実施計画(案)の検討
調査の意味、人数、地域割り、年齢制限、聞き取り調査事項、広報の方法、調査結果の提示方法、血液検査の精度管理について検討していただきました。
【第3回専門委員会】
平成14年12月17日(火)午後1:30~
調査対象者の選考
今後のスケジュールについての検討をしていただきました。
【第4回専門委員会】
平成15年6月5日(木)午後1:30~
健康調査結果の評価
住民説明会の内容及び日程等についての検討をしていただきました。
【健康調査住民説明会】
平成15年7月13日(日)1回目午前10:00~
2回目午後 1:00~
久喜宮代衛生組合大会議室にて住民説明会を開催いたしました。
健康調査(血液中ダイオキシン類)報告
当組合では、新設炉建設計画の一環として、現有焼却炉の排ガス中から出ているダイオキシン類が近隣住民に及ぼす影響を把握するため、“血液中ダイオキシン類健康調査専門委員会”で検討していただき、平成15年1月に「血液中ダイオキシン類の濃度測定及び生活状況関連調査」を実施しました。
調査結果につきましては、平成15年7月13日に住民説明会を開催(29名出席)し、ご報告いたしました。
「調査結果」と「周辺住民への健康調査」について説明いたします。
- 調査対象地域
現有ごみ処理施設から500m以内の行政地域といたしました。
久喜市:「下早見地区(54区)」
「太田袋地区(58区)」
宮代町:「宮代台地区」
「沖の山地区(沖の山、沖の山新田、ディアコート」) - 調査の内容
- 血液中のダイオキシン類の濃度測定
- 居住歴、職業歴、喫煙及び食習慣などの生活関連調査
- 調査対象者
調査対象地域に居住する住民で、下記の条件に該当し、濃度調査に協力できる者といたしました。- 原則として、16歳から69歳までの者
- 調査対象地域に5年以上居住している者
- 概ね週5日以上、1日12時間以上調査対象地域で過ごしている者
実施概要について
調査対象者人数・性別・平均年齢・平均居住年数等
『調査に協力していただいた人数』は、「住民32人(男性10人、女性22人)、平均年齢59.4歳、平均居住歴28年」及び「組合職員5人(男性5人)、平均年齢52歳、平均職員勤務歴25年」の『計37人』です。
『住民地域別の内訳人数』は、「久喜市下早見地区(54区)5人」及び「宮代町宮代台地区23人、沖の山新田地区4人」となっています。
居住地とごみ処理施設との距離(住民のみ)
「200mから400mが6人」、「400mから600mが10人」、「600mから800mが12人」、「800mから1,000mが3人」、「1,000mから1,200mが1人」となっています。
<血液中ダイオキシン類濃度測定調査結果>(単位:pg‐TEQ/g-fat)
【備考】
- TEQについて「平成12年度ダイオキシン類精密暴露調査」ではダイオキシン類はダイオキシン及びコプラナーPCBsともにWHO1998-TEFを使用した。
- 大阪府能勢町地域:廃棄物焼却施設周辺地区(A地区)及びその対照地区(B地区)
- 埼玉県地域:埼玉県3市2町(所沢市、狭山市、川越市、三芳町、大井町)の廃棄物焼却施設周辺地区(A1地区)、所沢インターチェンジ及び国道463号周辺(所沢市、三芳町)地区(A2地区)及びその対照地区(B地区)
- 対照地区とは廃棄物焼却施設から離れた地区
- 一般環境地域とは、周辺おおよそ2km以内に廃棄物焼却施設がなく、特別な環境暴露のないと考えられる地域
- 定量下限値(脂肪重量当り)
TeCDD/DF :1 pg/g-fat
PeCDD/DF :1 pg/g-fat
HxCDD/DF :2 pg/g-fat
HpCDD/DF :2 pg/g-fat
OCDD/DF :4 pg/g-fat
コプラナーPCB :10 pg/g-fat - 定量下限未満の数値を定量下限の1/2として毒性当量を算出した。
血液中ダイオキシン類濃度の分析値
- 血液中ダイオキシン類濃度の住民の平均値は、24pg-TEQ/g-fat、濃度範囲は12~50pg-TEQ/g-fat、職員の平均値は21pg-TEQ/g-fat、濃度範囲は8.9~35pg-TEQ/g-fatであった。
- 今回の分析値は、住民ではこれまで行われた我が国の血液中ダイオキシン類濃度の報告値の中でほぼ同値の領域である。また、職員についても全国の廃棄物焼却施設労働者の報告値とほぼ同値の領域にある。
- 分析値については、精度管理システム、及び回収率を検討した結果をみる限り、データの信頼性の問題はないと判断される。
解析結果
- 対象者について、血液中PCDDs/DFs濃度及び血液中コプラナーPCB濃度と年齢の 間には相関がみられた。加齢とともにダイオキシン類濃度が高い傾向を示しているが、これは全国の血液中ダイオキシン類の測定結果でみられる傾向である。ダイオキシン類の体外への排出には期間を要すため、過去のダイオキシン類暴露が累積してきた結果と考えられる。
- 住民の居住歴と血液中ダイオキシン類濃度とは、関連がみられなかった。
- 職員の勤務歴と血液中ダイオキシン類濃度とは、関連がみられなかった。
- ごみ処理施設から住民居住地までの水平距離と血液中ダイオキシン類濃度とは、関連がみられなかった。
- 喫煙習慣と血液中ダイオキシン類濃度とは、住民・職員とも関連がみられた。「喫煙中」のダイオキシン類濃度が、「喫煙しない」と比較してやや高かった。
- 食習慣と血液中ダイオキシン類濃度とは住民・職員とも関連がみられなかった。
≪周辺住民への健康影響≫
今回の調査結果を見る限りでは、久喜宮代衛生組合焼却施設の周辺住民のダイオキシン類血液中濃度は、これまでの我が国の調査結果と比較して高濃度ではなかった。
現時点では、この地域においてさらに健康影響について調査を継続する必要性はないものと考えます。